つくば市では 10 年近くにわたって毎年開催されている、世界でも珍しい 2000m のレースがあります。公園や街中の道路やショッピング モールを通るというコースどり、ゆったりとした散歩のようなペースが風変りなのではなく、その参加者です。レースに参加するのは、すべて自律ロボットなのです。
この「つくばチャレンジ」と呼ばれるイベントは、コース上の人や標識、信号などの様々な目標物を見つけながら、ロボット自身で現実世界の都市環境を走破するという難しい課題に挑戦させるものです。
今年は、宇都宮大学、千葉大学、筑波大学からの生徒と卒業生から成る 3 チームが、NVIDIA の Jetson 組み込みコンピューティング・プラットフォームを利用してロボットを作り上げました。各チームのロボットが、ディープラーニングを利用して信号機や標識、その他のコース上の物体を認識し、かつ歩行者や自転車に乗った人を避けながら街中のレースコースを走破することに成功しました。
大学内から外のコースへ
宇都宮大学チームは Jetson TX1 を用いて、ビジュアル・オドメトリー、標識の認識、ターゲットの検出を行いました。ビジュアル・オドメトリーは、GPS などの外部システムの助けなしに、カメラからの画像を解析することでロボットの位置や向きを把握する手法です。大学の研究者たちはこれらの機能は、不整地を移動して作物を識別する農業ロボットで特に重要になってくると考えています。
宇都宮大学教授 工学研究科 機械知能工学専攻の尾崎博士は以下のように述べています。 「歩行者用の横断歩道はたくさんの人が同時に渡っていたり、青信号から青に点滅、そして、赤信号、赤信号から青へと変化しました。Jetson は、ロボットから見える様々な色の変化に追従し、誤認識せず、信号の変化を正しく認識できました。」
千葉大学チームの LIDAR (レーザーを用いた測距機) データを解析するのに、Jetson TX1 のビジュアル・コンピューティング能力を活用しました。LIDAR からの点群データを 2 次元データに変換し、NVIDIA の DIGITS と GPU によって学習させたニューラル ネットワークに通すことで、画像上の車、歩行者、サイクリストといった主要な物体を検出させます。千葉大学チームは、大学での研究において重要な、省スペース性、軽量性、耐衝撃性、低消費電力、そして入手容易性のために、Jetson TX1 に移行した経緯があります。
千葉大学大学院 工学研究科 人工システム科学専攻 機械系コースの大川一也博士 (工学) は以下のように振り返ります。「Intel CPU が実装されたノートブック コンピュータを使う代わりに、Jetson TX1 ですべての処理をすることができました。Jetson の高い性能で、センサー データの取得や自己位置推定、障害物検出などすべての必要な動作をカバーすることができました。」
筑波大学チームの卒業生たちは、Jetson TX1 と 2 台の Jetson TK1 を搭載した、i-Cart Middle というロボットを製作しました。AverMedia 製の C353 HDMI キャプチャー ボードを挿した Jetson TK1 が魚眼レンズ画像を整形します。もう一つの Jetson TK1 は畳み込みニューラル ネットワークを利用した、人の検出に利用されています。
そして Jetson TX1 が Faster R-CNN を走らせて、つくばチャレンジのミッションのキモでもある、カメラの画像から信号機の切り替わりの検出を行います。
土浦プロジェクトのチームリーダーである阪東茂博士 (工学) は以下のように述べました。「Jetson を 3 台搭載しましたが、大型のモバイルバッテリー (12V50Ah) で 3 時間程度フル稼働できるほど省電力で、非常にパワーマネージメントに貢献したと考えております。」
ロボットを進化させる NVIDIA Jetson についてはこちらをご覧ください。
Pingback: NVIDIA Jetson 搭載ロボットが「つくばチャレンジ」で活躍 | AINOW