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AIがプロ・フットボール・コーチのアシスタントへ

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アメリカン・フットボールの名将、ビル・ベリチック(Bill Belichick)コーチなら心配は無用です。なぜって、フットボールの指導は――少なくとも、今のところは――人工知能(AI)には務まりませんから。

でもいつか、ニューイングランド・ペイトリオッツのヘッド・コーチをはじめ、NFLのヘッド・コーチ陣が、練習や試合録画の分析など、仕事でAIを必要とする日が来るかもしれません。

「AIはスポーツに変革をもたらすでしょう」と、オレゴン州立大学のコンピューター・サイエンスの教授であるアラン・ファーン(Alan Fern)氏は言います。同氏は、試合のビデオとAIを利用して、コンピューターにフットボールを理解し、指導できるよう学習させています。

同氏がこの研究に成功すれば、各チームは、GPUとAIの一種であるディープラーニングを利用した新たなタイプのアシスタント・コーチを獲得し、各自の知力を高めることが可能になるでしょう。老練なコーチですら見抜けない戦略的洞察が得られることさえ期待できます。

AIがプロになる

AIはすでにスポーツ産業で幅広く利用されています。ますます多くのベッティング・サービスが、人間に近い(あるいはそれ以上)の精度で処理できるようコンピューターに学習させる手法としてディープラーニングを採用し、試合の勝者を予想するようになっています。また、マイクロソフトは、自社のBing Predictsを通じて試合の予想を無料で提供しており、昨年のNFLレギュラー・シーズンの試合では65.5%の確率で勝者を言い当てました。

このように、通常は人々が行う仕事をディープラーニングが引き受けるようになっています。ワシントン・ポスト紙は最近、夏季オリンピックの速報を生成するためにこのテクノロジを取り入れました。また、研究者らは、クリケットやテニスの試合の解説を自動化する実験を行っています。

一部のスポーツでは、戦略に役立てるためにAIの採用や試験的導入を進めています。たとえば、NBAの各チームは、AIとコンピューター・ビジョンの技術を活かし、選手や試合の追跡を行っています。そのため、コーチ陣はきめ細やかな統計を収集し、戦略や選手のパフォーマンスを評価するために利用することが可能です。

「しかし、フットボールを指導できるコンピューターを開発することは、はるかに困難です」と、ファーン氏は言い、次のように続けます。

「フットボールは、世間で最も戦略的なスポーツだからです。11人の選手によるフォーメーションは試合ごとに異なります。そのため、どうしても複雑な戦略の数が増えてしまうのです。」


「2013 Pro Bowl」の期間中には、AIのフットボール・コーチがこのような試合の評価や計画の策定に貢献しました。

AIに対するトレーニング・キャンプ

コンピューターが戦略を立てるには、少なくとも平均的なファンと同じくらい試合を理解していなければなりません。ファーン氏は、オレゴン州立大学チームによるフットボールの試合や、数百時間に上る高校フットボールのビデオをニューラル・ネットワークに取り込むことで、スナップをはじめ、キック、パス、走るといった動作の違いや、チームがオフェンス側かディフェンス側かを検出できるようにトレーニングを行いました。

さらに、ファーン氏の「自動計画」(AIの一種で、目標を達成するためにアクション・プランや戦略を自動計算することを学習する)での功績により、ニューラル・ネットワークはより質の高いフットボール・ビデオ・ゲームのプレイを設計することさえできます。

とはいえ、さまざまなタイプの試合に対するコンピューターの理解はまだ不完全です。また、ビデオだけに基づいてフィールド上の22人の選手をすべて追跡する作業にも苦戦しています。

その解決策として、ファーン氏は、NVIDIAのTesla K80 GPUアクセラレータCUDAプログラミング・モデルを採用しました。これにより、NFLの「22人全員」のビデオ内で選手を追跡して、試合を理解するためのディープラーニング・アルゴリズムの開発を進めています。放送映像のようにサイドラインの外側からではなく、上空からの視点でフィールドを撮影したビデオを使うことで、コーチ陣は選手全員を同時に確認し、試合を分析して戦略を練ることが可能になります。

ディープラーニングで万全の態勢を整える

ファーン氏は、たちまちコンピューターにプロの外部コーチが務まるとは考えていませんが、ディープラーニングと新たなセンサ・データが利用される日が来ると信じています。

一部のヨーロッパ・サッカー・チームでは、選手の心拍数や、長距離走、速度、加速度などの指標を監視するため、ウェアラブルGPSシステムを採用しています。2015年には、NFLがRFIDタグの埋め込まれたショルダー・パッドを全選手に支給しました。そのコイン・サイズのチップが、フィールド上での各選手の位置、移動距離、加速度、動きを追跡します。

「研究者がこのようなデータにアクセスできるようになれば、試合についてこれまで得られなかった洞察をディープラーニングによって引き出せるようになります」と、ファーン氏は説明します。たとえば、試合中の選手の動きを知ることで、コーチ陣は選手が最高のパフォーマンスを発揮できるようなトレーニングを計画できるようになるでしょう。また、レシーバーとコーナーバック間の最適な組み合わせのヒントを得ることや、試合ごとに各選手の貢献度を評価することも不可能ではありません。

「このようなノウハウを持つAIアシスタント・コーチなら、チームにとって欠かせない存在になるはずです」とファーン氏は指摘し、次のように今後を語ります。

「我々がその方法を確立できれば、きっとAIの導入競争が起こるでしょう。AIを採用しないチームにとって、大きく不利になる状況が予想されます。」


Jamie Beckett

Jamie most recently spent four years as director of communications at Stanford’s School of Engineering, and previously served as managing editor for Cisco’s newsroom and for HP Labs’ newsroom. She began her career as a journalist, and spent a decade at the San Francisco Chronicle. Earlier she worked at the Stamford Advocate, in Connecticut, where she was part of a team that was nominated for the Pulitzer Prize.

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