人工知能がテクノロジ界を席巻する中、NVIDIAは本日、年に一度開催されるGPUテクノロジ・カンファレンスで、ディープラーニング、バーチャル・リアリティ、自動運転車両などに重点を置いた、一連の新たな製品やテクノロジを発表しました。
科学者、エンジニア、起業家、世界中の記者団からなる5,000人を超す記録的な聴衆を前に、NVIDIAのCEO兼共同創立者、ジェンスン・フアン(Jen-Hsun Huang)は、世界初のボックス型ディープラーニング・スーパーコンピュータを発表しました。250台のサーバーに匹敵するコンピューティング・スループットを誇る単一の統合システムです。NVIDIA DGX-1は、170テラフロップスの半精度パフォーマンスを提供し、トレーニングを12倍以上高速化できます(「NVIDIA、世界初のディープラーニング・スーパーコンピュータを発表」参照)。
AIの能力を解き放つ
AIと顔認識について語るNVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏
「人工知能は、私たちが生きているこの時代で、もっとも長足の進歩をとげた技術分野です」とフアンは聴衆に語りました。「あらゆる業種、あらゆる企業、あらゆるものがこれによって変わります。そして、誰もが恩恵を受けるような市場が生まれます。DGX-1は、展開が容易であり、ある一つの目的のために作られました。それは、AIの能力を解き放ち、かつては解決不可能だったような問題に超人的な能力で対処することです」
2時間に及ぶ講演の中で、フアンは、AIの現状について説明し、AIが展開されつつあるさまざまな用途を指摘しました。AlibabaからYelp、AmazonからTwitterにいたるまで、20社以上のクラウド・サービスの巨人たちを例にあげ、これらの企業がハイパースケールのデータセンターで膨大な量のデータを生成し、写真の処理、音声認識、写真の分類などのタスクにNVIDIA GPUを利用していることについて話しました。
5つの奇跡
フアン氏とTesla P100
DGX-1の土台となっているのは、画期的な新しいプロセッサであるNVIDIA Tesla P100 GPUです。このプロセッサは、これまで製造されたなかでも最先端のアクセラレータであり、NVIDIAの第11世代Pascalアーキテクチャをベースとした初のプロセッサです(Pascalの詳細については、「Pascalとは:NVIDIAの最新のコンピューティング・プラットフォーム」を参照)。
フアンが微笑みながら「奇跡」と呼んだ5つのブレークスルー・テクノロジに基づき、Tesla P100は、何百ものCPUサーバー・ノードに匹敵するパフォーマンスを提供できる新たなクラスのサーバーを実現します。
Facebookのヤン・ルカン(Yann LeCun)氏やIBMのジョン・ケリー(John Kelly)氏など、数人のAI業界リーダーが、既に本製品へのサポートを表明しています。Baiduのチーフ・サイエンティストであるアンドリュー・ン(Andrew Ng)氏は、次のように述べています。「AIコンピュータは宇宙ロケットのようなもので、大きいほうがいい。Pascalのスループットと相互接続により、これまでで最大のロケットができるはずです」
DGX-1の重要な初期のお客様に、マサチューセッツ総合病院があります。同院では、NVIDIAを設立パートナーとし、放射線医学と病理学の分野を手始めに、病気の診断にAIを活用する臨床データセンターを立ち上げました。全米最大の研究病院であるマサチューセッツ総合病院には、100億に上る医療画像のアーカイブがあり、ディープラーニングの対象としては最適です。
NVIDIAのソフトウェア面の紹介
GTC 2016で基調講演を行うNVIDIAのCEO、フアン氏
NVIDIAのハードウェアは長年、記事の見出しとなってきたものの、最先端のGPUアクセラレーテッド・コンピューティングの推進において鍵となるのはソフトウェアです。これらのソフトウェアはNVIDIA SDKと呼ばれ、その主なアップデート内容についてフアンが説明しました。これらは、ディープラーニングから自動運転車両、組み込みコンピューティングにいたるまで、あらゆるものに影響を与えます(「NVIDIA、最先端のGPUコンピューティングに磨きをかける主要なソフトウェア・アップデートを発表」参照)。
これらのアップデートによりNVIDIAが目指すのは、当社の能力をより多くの開発者が利用できるようにすることです。100万人以上の開発者が既に当社のCUDAツールキットをダウンロードしています。また、当社のソフトウェア・ライブラリの恩恵を受ける市販のGPUアクセラレーテッド・アプリケーションは400を超え、ゲームも何百とあります。
バーチャル・リアリティをリアルに
GTC 2016でIray VRを紹介するNVIDIAのフアン氏
基調講演の視覚的なクライマックスは、火星へ人間を送るためのNASAの研究に基づき作られたVR体験の紹介でした。NASAからアドバイスを受けつつFUSION Mediaと共同で開発した『Mars 2030』のVR体験のデモを、パーソナル・コンピューティングのパイオニアであるスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)氏が行いました。
フアンはさらに踏み込んで、当社のIrayテクノロジが、類を見ない忠実さを持つインタラクティブな仮想3D世界を創造する様子を紹介しました。これらのIray VR機能により、ユーザーはヘッドセットを着用し、まだ建設されていない建物など、写真のようにリアルな仮想環境を歩き回ることができます。
VRで何が行えるかを示すため、Googleから5,000個のGoogle Cardboard VRビューアーが提供されました。当社はこれらのビューアーを、GTCの参加者が各自スマートフォンでNVIDIA Iray VRテクノロジを体験できるよう、基調講演後に配布しました。
よりスマートな車に向けて
ROBORACER – 世界初の自律走行カーレース
超人的なレベルの認知能力を持つ自律走行車両の開発に向けての取り組みを継続する一方で、当社は自動運転車両のためのエンドツーエンドのマッピング・プラットフォームも発表しました。
車内のNVIDIA DRIVE PX 2とデータセンター内のNVIDIA Tesla GPUの演算能力を利用し、自動車メーカー、地図会社、スタートアップ企業が、HDマップを迅速に作成し、最新の状態に保てるようにするものです。
地図は自動運転車両の重要な要素です。自動車メーカーは、車両が環境を正確に理解できるよう、複数のセンサーからの入力情報を処理できる強力なオンボード・スーパーコンピュータを車両に搭載する必要があります。これに詳細な地図を加えると、車両は現在地や次に何がやって来るかをよりよく理解できるようになり、問題はより単純なものとなります。
当然ながら、競争なしでは、テクノロジの本当の実力はわかりません。したがって、世界初の自律走行モーター・スポーツ競技会であるROBORACE Championshipでは、DRIVE PX 2 AIスーパーコンピュータが活用されるだけでなく、当社は自ら、この選手権シリーズに出場する初のチームとして参加も行います。