もしあなたが速球を投げることによって生計を立てているなら、厳しいシーズンになることを覚悟してください。
今年のCESでベースボール・シミュレーターを体験する、トロント・ブルージェイズのトロイ・トゥロウィツキー(Troy Tulowitzki)選手
メジャーリーグの複数の球団が、EON Sports VRを活かして、バーチャル・リアリティ(VR)によるバッティング・ケージの設置を進めています。そのおかげで、バッターは、ピッチャーの疲労や春の豪雨を気にせず、かつてない精度で自分のスイングを磨くことができます。
EON Sportsは、多くの有名企業を顧客として持ちながらも、従業員がたった5名という新興企業であり、米国ミズーリ州カンザスシティに拠点を置いています。同社を率いるブレンダン・レイリー(Brendan Reilly)氏は、大学バスケットボールのコーチを務めたキャリアを持っており、実際の試合でないと見られないような状況で選手の指導やトレーニングを行える良い方法はないかと考えていました。
そうして彼は市場を見いだしたわけです。
最も大きな事例では、いくつかのメジャーリーグ・チームが、(同氏が口外しないことを条件に)EON Sportsのソフトウェアを一連のプロジェクターや高機能モーショントラッキング・ギアと組み合わせて、ハイパーリアリスティックなバーチャル・バッティング・ケージを開発しました。選手が実際の試合で直面する可能性のあるあらゆる球種を体験できるだけでなく、コーチや選手がバーチャルな球の軌道を目で追うこともできます。
もちろん、SFファンなら、これはどれも目新しいものではないでしょう。VR体験は、昔ながらのバッティング・ケージというより、スタートレックのホロデッキのようなものだからです。その体験は、最も優れたアマチュア選手でさえ動揺することでしょう。
トレーニング・アプリのスチール写真――ジェイソン・ジアンビ(Jason Giambi)選手によるバッティングの指導
レイリー氏は、次のように認めています。「その難しさはかなりシュールです。当社の開発者は、158キロの速球と137キロのチェンジアップをおりまぜて、メジャーリーグの選手たちから三振を奪うのを楽しんでいます」
NVIDIA Quadroで最高のピッチングを実現
EON Sportsでは、説得力のあるハイパーリアリズムを達成するため、Quadroビジュアル・コンピューティング・プラットフォームを採用しています。Quadroプロフェッショナル・グラフィックスが、超解像度ディスプレイでのフォトリアリスティックな色の再現を可能にし、リアルタイムのVR体験を提供します。また、Quadro Syncが、最大4枚のQuadro GPUカードと最大16台のディスプレイまたはプロジェクターの間で通信を行い、シームレスなマルチスクリーン、マルチプロジェクター体験を実現します。
EON Sportsのシミュレーターは、フットボール選手が各自のプレーを磨くこともできるため、NFLのタンパベイ・バッカニアーズや、UCLA、ミシシッピ大学、シラキュース大学、カンザス大学でも利用されています。このソフトウェアは、NVIDIA QuadroプロフェッショナルGPUを搭載したノートパソコンとプロジェクターを設置するだけで実行できます。
また、スマートフォン・アプリ「Project OPS」の開発も進行中です。アマチュア選手がこのアプリをヘッドセットに接続することで、ストライク・ゾーンに対する各自の認識や、投球に対する認識スキル、さらには自分のスイングまで、細かく調整できるようになります。
このように、メジャーリーグ球団のトレーニング施設内に隠されたホロデッキでバッティングする場合も、ヘッドセットを顔に装着してスイングする場合も、EON Sportsは、バッティング・ケージですら再現できない体験を約束します。
これは、どんなピッチング・マシンよりも最高のピッチャーのほうが、はるかに駆け引きに長けているためです。ピッチャーは、私たち凡人にはとても打てないような球を山のように投げてきますが、それでもなお、ここぞというときのために、最高の球を隠し持っています。
「バッティング練習でプロのピッチャーに最高のピッチングを行ってもらえることなどありえません。ピッチャーは肘を痛めたくはありませんからね」と、レイリー氏は言います。
それは当然なことでしょう。そして、VRトレーニングで育成された新世代のバッターたちが続々登場しようとしている今、ピッチャーはこれまで以上に、最高の球は試合当日までとっておくようになるでしょう。
今年のMLBシーズンは、NVIDIA GPUテクノロジ・カンファレンスの初日と同じ4月4日に開幕します。カンファレンスのVR Villageでは、EON Sportsをはじめ、さまざまなプロフェッショナルVRユーザーや開発者(realities.io、Jaunt VR、Lucasfilm、Audiなど)によって、講演や展示が行われる予定です。