最先端テクノロジのこれまでの限界が打ち破られるとき、驚くべき破壊的パワーが放たれます。
映画『Deadpool』は、元特殊工作員の傭兵で、ミュータント能力を持つだけでなく口も達者な、ウェイド・ウィンストン・ウィルソン(Wade Winston Wilson)の物語です。
しかし、この映画は、ほんの数年前には想像できなかったような、衝撃的なオープニング・シーンを生み出した経緯を伝えるストーリーでもあります。
マーベル・コミックの最も型破りな、ヒーローらしからぬ主人公をモチーフとし、Blur Studioのティム・ミラー(Tim Miller)氏が監督を務めた『Deadpool』は、冒頭からラストまでアクション満載で、驚異のタイトル・シーンによって幕を開けます。
90秒のカメラ・ショットでは、時が止まるバトル・シーンを鮮やかに紡ぎ出し、まさに圧巻です。ミラー氏は、BlurにフルCGでこのシーンを製作するよう依頼しました。
GPUによるレンダリングが映像をリアリティに変える
『Deadpool』に登場する、あっと驚く主人公のアクションシーン
Blurはまず、映画会社とミラー氏に見せるための詳細なプレビズ(各シーンの仕上がりをイメージするためのプレビュー)を製作しました。通常、このようなコンセプト・プレビューは、荒い仕上がりであり、単純なモデル、ライティング、テクスチャが使われます。しかし、すべての顧客がそうした制約をふまえて評価してくれるわけではありません。
『Deadpool』のライティング・テクニカル・ディレクタを務めた、Blurの視覚効果担当スーパーバイザ兼ディレクタであるケビン・マルゴ(Kevin Margo)氏は、以前に自身のフルCG短編映画「Construct」の製作で、GPUレンダリングを試したことがありました。そのため、同氏は、GPUレンダリングを利用すれば、チームが可能な限り視覚的にリアリティと臨場感の高いプレビズを実現できると知っていました。
マルゴ氏は次のように振り返ります。「我々はFoxの目の前に、自分たちの最高品質のプレビューを提示したかったのです」
Blur Studioは、Autodesk 3ds Maxを使って、一からCGアセットを構築しました。次に、Chaos GroupのGPUレンダラV-Ray RTを利用して、各アセットのレンダリングを行いました。V-Ray RTは、NVIDIA GPU上で排他的に実行され、CPUレンダラよりも最大15倍高速です。
GPUレンダリングで実現するスピードと忠実性
映画製作者たちは、セットで撮影された映像を視覚効果とともに、Open Drivesが提供するストレージに流し込みました。続いて、BlurのCGアーティストたちは、NVIDIA Quadro M6000 GPUを実行するHP Z840ワークステーションを駆使して、オープニング・タイトル・シーンのプレビズの製作に取りかかり、ほぼ完成形に近いものに仕上げました。
引用文:「GPUレンダリングの能力と、M6000を搭載したHPワークステーションの実行速度やリアルタイムのインタラクティビティを組み合わせることで、我々はこれまで不可能だった映像のレンダリングを検討できるようになりました。そのため、作業が格段に容易になり、効率的になりました」– Blur Studio、ケビン・マルゴ氏
Blurでは、テクスチャやグローバル・イルミネーションなどを短時間でインタラクティブに適用して、デザインを洗練させることが可能になりました。これにより、シーンのプレビズをわずか数日で完成させ、レンダリングを行うことができました。
その結果、忠実性のきわめて高い、物理学に基づいたレンダリングが実現します。そしてついに、Foxのエグゼクティブは、仕上がりを完全にイメージできる狙いどおりのシーンを目にし、ゴーサインを出したのです。
NVIDIA GPUテクノロジ・カンファレンスのメディア&エンターテイメント・トラックで、NVIDIAレンダリング・ソリューションについてぜひご確認ください。Blur StudioやChaos Groupからも情報が提供される予定です。また、Open Drivesの映画製作用ネットワーク、ストレージ、ワークフローについても、今後ご確認いただけるようになります。