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GPU、巨大ガス惑星形成の謎に迫る

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木星――この星は巨大なガス星です。太陽側から数えて5番目に位置する太陽系最大の惑星です。このように分かっていることもたくさんありますが、木星がそこにできた理由は、つい最近まで説明することができない状態でした。ここにブレークスルーをもたらしたのが、GPUを活用したとある研究チームです。

ガス惑星というのは、原始惑星と呼ばれる固体をコアとして、そこに氷やちりが集まって形成されたと考えられています。この固体コアが地球の10倍程度の大きさまで急速に成長すると、膨大な量のガスを集積しはじめ、巨大ガス惑星になるというのです。

この考え方には問題がひとつあります。物理学的に計算すると、惑星形成のもととなった円盤状のガス、いわゆる原始惑星系円盤が生みだす重力の作用により、生まれた惑星は中心の恒星に向かって螺旋軌道で落ちていくはずなのです。つまり、宇宙には、地球のように岩石主体の巨大な惑星が満ちあふれ、巨大ガス惑星は少ないはずなのです。

この理論と現実の観測結果には、矛盾があります。NASAのKeplerというミッションで、太陽系外の恒星を巡る地球型惑星の探索が行われましたが、その結果、理論的に説明がつかないほど多くの巨大ガス惑星が見つかっています。

巨大ガス惑星の誕生:原始惑星と呼ばれる固体に氷やちりが集まってガス惑星が形成される
巨大ガス惑星の誕生:原始惑星と呼ばれる固体に氷やちりが集まってガス惑星が形成される

GPUでガス惑星の謎に迫る

理論と観測結果の食い違いを解消する共同研究をしようと、原始惑星系円盤と惑星の相互作用を専門とする研究者、4人が3カ国から集まりました。メキシコ国立自治大学のFrederic Masset氏とGloria Koenigsberger氏、アルゼンチンのコルドバ大学のPablo Benitez-Llambay氏、フランスのコートダジュール天文台のJudit Szulagyi氏が集まり、原始惑星系円盤と原始惑星が物理的にどういう影響を与えあっているのか、モデル化を試みることになったのです。

このシミュレーションは、ちょっとやそっとでは実行できません。成長しながら移動していく天体をガス状の星雲が取り囲んでいるわけで、その星雲の流体力学的挙動をモデリングしたり、星雲内における放射エネルギーの移動を計算したりしなければならず、そのためには、すさまじいばかりのコンピューティング・パワーが必要になります。これをすべてCPUで実行したら、何百万時間ものCPU時間が必要になってしまいます。だから、この研究チームは、NVIDIA Tesla K20 GPUアクセラレータのクラスタを採用しました。

研究チームは、NVIDIA CUDAにより、FARGO3Dというコードを開発して公開しました。流体力学的挙動と放射によるエネルギーの移動についての計算を一手に引きうけるコードです。NVIDIA Kepler GPUアーキテクチャ採用のTesla K20クラスタによるコードの実行時間は、各研究者のモデルごとに時間単位で数えられる範囲となりました。1 CPUコアと1 GPUの比較で40倍のスピードアップに相当します。

見事に謎を解明

この研究で、生まれたばかりの木星や他の惑星は、周囲の物質をどんどん集積し、熱を放散していたことが明らかとなりました。原始惑星系円盤内にはガスの流れがあるため、惑星周囲における熱の分布が不均一となり、その温度差――つまり密度の差――が、惑星を中心の恒星に向かわせるのではなく、そこから遠ざける力を生みだしていたのです。

いままでも惑星が外向きに移動していた証拠が発見された研究はあったのですが、同時に、内向きに移動するのでなければ観察に基づく統計が説明できないとされることが多くありました。今年、ネイチャー誌に掲載された今回の研究により、ようやく、全体を統一的に説明できるようになったわけです。

惑星が中心の恒星に向かってではなく、そこから離れるように移動していったのは、新しい惑星を取り巻くガスの加熱が不均一だったからでした。今回の研究により、NASAが観測してきた多数の巨大ガス惑星について説明することが可能となり、ガス惑星の形成を取り巻く謎の解明に向けて大きく一歩、前進できたわけです。


Isha Salian

Isha Salian is a part-time writer on NVIDIA's corporate communications team, having first joined the company as an intern in summer 2015. When not hunting down visual computing stories, she's a Stanford undergraduate majoring in communications and English. An aspiring writer, Isha’s many obsessions include books, dance (of the Indian classical variety), Netflix and Chipotle.

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