TSMC と NVIDIA がアクセラレーテッド コンピューティングで半導体製造を変革

投稿者: Vivek Singh

TSMC が NVIDIA cuLitho コンピュテーショナル リソグラフィ プラットフォームの運用を開始

半導体製造の世界的大手企業である TSMC では、NVIDIA のコンピュテーショナル リソグラフィ プラットフォームである cuLitho の運用を開始します。これにより、製造が加速され、次世代の高度な半導体チップの物理的限界が押し広がることになります。

コンピューター チップの製造における重要なステップであるコンピュテーショナル リソグラフィは、回路をシリコンに転写する作業に関係しています。これには、電磁物理学、光化学、計算幾何学、反復最適化、分散コンピューティングを含む複雑な計算が必要です。一般的なファウンドリでは、この計算のための大規模な専用データセンターを用意していますが、このステップは従来、新しいテクノロジ ノードとコンピューター アーキテクチャを市場に投入する際のボトルネックとなっていました。

コンピュテーショナル リソグラフィは、半導体設計および製造プロセス全体の中で最も計算負荷の高いワークロードでもあります。最先端のファウンドリでは、年間数百億時間の CPU 時間を消費します。1 枚のチップの一般的なマスク セットでは CPU 計算時間が 3,000 万時間以上も必要になるため、半導体ファウンドリ内に大規模なデータセンターを必要とします。アクセラレーテッド コンピューティングにより、今では 350 台の NVIDIA H100 Tensor コア GPU ベースのシステムで 40,000 台の CPU システムを置き換えることができ、生産時間を短縮し、コスト、スペース、消費電力が削減されます

NVIDIA cuLitho は、コンピュテーショナル リソグラフィの分野にアクセラレーテッド コンピューティングをもたらします。現在の生産プロセスが物理的に可能な限界に近づいている中、cuLitho の運用を開始することで、TSMC は次世代チップ テクノロジの開発を加速できます。

「NVIDIA と共に GPU アクセラレーテッド コンピューティングを TSMC のワークフローに統合した結果、パフォーマンスが大幅に向上し、スループットが劇的に改善され、サイクル タイムが短縮され、必要な電力が減りました」と、TSMC の CEO である C.C. Wei 博士は、今年 3 月に開催された GTC カンファレンスで語っています。

NVIDIA は、生成 AI を適用してアルゴリズムも開発し、cuLitho プラットフォームの価値を高めました。新しい生成 AI ワークフローは、cuLitho によってプロセスの高速化が実現されるだけでなく、さらに 2 倍のスピードアップを実現することが実証されています。

生成 AI を適用することで、コンピュテーショナル リソグラフィに関係する光の回折を考慮したほぼ完璧な逆マスクまたは逆解法の作成が可能になります。その後、最終マスクが従来の物理的に厳密な方法で生成され、全体的な光近接効果補正プロセスが 2 倍高速化されます。

半導体リソグラフィにおける光近接効果補正の使用は、今や 30 年の歴史があります。この間、この分野には数多くの貢献が寄せられてきましたが、アクセラレーテッド コンピューティングと AI という 2 つのテクノロジがもたらすほど急速な変革はほぼありません。この 2 つのテクノロジが合わさることで、物理的により正確なシミュレーションと、かつては法外なリソースを消費していた数学的手法の実現が可能になります。

コンピュテーショナル リソグラフィのこの大幅な高速化により、工場内のすべてのマスクの作成が加速され、新しいテクノロジ ノードの開発にかかる総サイクル タイムが短縮されます。さらに重要なのは、これまでは実用不可能だった新しい計算が可能になることです。

たとえば、逆リソグラフィ技術は 20 年にわたって科学文献で説明されてきましたが、計算に時間がかかりすぎるため、フル チップ スケールでの正確な実現はほとんど不可能でした。しかし cuLitho を使用すれば、もう不可能ではありません。最先端のファウンドリは cuLitho を使用することで、次世代の強力な半導体の作成に役立つ逆解法や曲線解法を強化することになるでしょう。

画像提供:TSMC