データの海を航海:スタートアップの Saildrone が自律的海洋モニタリングに挑む

投稿者: Scott Martin

Saildrone の、自律的な海洋モニタリングが大きな反響を呼んでいます。

このスタートアップの航海データ収集技術は、北大西洋でハリケーンを間近に追跡し、太平洋で深さ約 1 km の海底山を発見し、世界の海底全体の地図作成に貢献し始めています。

サンフランシスコのベイエリアを拠点とする同社は、さまざまなセンサーを搭載した自律型の無人探査機 (USV) を開発しています。そのデータ ストリームは、エッジでの AI 用に NVIDIA Jetsonモジュールで処理され、インテリジェント ビデオ解析用に NVIDIA DeepStreamソフトウェア開発キットでプロトタイプが最適化されています。

Saildrone は、科学、漁業、天気予報、海洋地図の作成、海上警備のためのデータ収集システムを提供し、海洋情報収集の費用対効果を高めようとしています。

3 種類の USV を保有し、Saildrone の Mission Portal コントロールセンター サービスが、カスタマイズされたミッションのモニタリングや、ほぼリアルタイムでのデータの可視化に活用されています。また、Saildrone の過去のデータの一部は一般公開されています。

「私たちはこれまで 3 つの大きなハリケーンに遭遇し、ハリケーン『Sam』(2021 年にバミューダを襲った強力なサイクロン) の目もくぐり抜けましたが、3 種の USV はいずれも無事でした。かなり頑強なプラットフォームと言えます」と Saildrone のソフトウェア エンジニアリング担当バイス プレジデントの Blythe Towal 氏は語っています。

Saildrone は 2012 年に設立され、1 億 9000 万ドルの資金を調達しました。このスタートアップは、企業に技術支援と AI プラットフォームのガイダンスを提供するプログラムである NVIDIA Inception のメンバーです。

AI が地球の海を監視し続ける

Saildrone が行う、無人のデータ収集のミッションは、海洋や湖沼の環境調査において大きく注目されています。

ハワイ大学マノア校は、気候変動による海洋酸性化の影響を調査するため、約 7m の Saildrone Explorer USV を 3 隻活用しています。ハワイ島、マウイ島、オアフ島、カウイ島を巡る 6 ヶ月間のミッションは、ハワイ州周辺の海の健康状態の評価に貢献します。

海洋酸性化とは pH の低下であり、その要因としては化石燃料の燃焼や養殖などが挙げられます。これらは珊瑚、牡蠣、アサリ、ウニ、石灰質プランクトンに影響を与え、海洋生態系を脅かす可能性があります。

Saildrone は最近、世界の海を完全に地図化するために Seabed 2030 と提携しました。Seabed 2030 は、日本財団と GEBCO (General Bathymetric Chart of the Oceans) の協力で、2030 年までに世界中の海底を地図化することを目標としています。

「Saildrone のビジョンは、健全な海洋と持続可能な地球です」と Saildron の CEOである Richard Jenkins 氏は述べています。「海底の完全な地図を作成することは、それを達成するために必要不可欠です」

世界中の科学界は、超局所的な気候モデリング炭素隔離を改善する AI、再生可能エネルギー研究、そしてその他多くの分野を含む、気候研究に NVIDIA AI を採用しています。NVIDIA は、独自の専門知識を駆使して、気候変動を予測するための世界で最も強力な AI スーパーコンピューター、Earth-2を開発中であり、これは Omniverse 上で地球のデジタル ツインを作成するためにも使用されます。

エネルギー効率の高いデータ処理

Saildrone の USV は、研究者が従来の船や乗組員よりも少ないリソースでより多くのデータを収集することを可能にし、かつエネルギーを節約し、乗組員が危険にさらされるのを防ぐことができます。

USV は過酷な天候と長時間の任務に耐えられるように開発されています。最近、同社の USV の 1 台が、米国のロード アイランド州から北大西洋を横断してアフリカのカボベルデまで渡航し、アフリカ西岸沖の赤道まで下ってフロリダに戻るという、二酸化炭素をモニタリングするための 370 日間の航海を完了しました。

USV の原動力をほとんど太陽光発電と風力発電を用いて稼働させるには、大量のデータを処理するためのエネルギー効率の高いコンピューティングが必要です。

「太陽光発電を利用したこの種のミッションおいては、NVIDIA Jetson を導入することで、GPU を実行する一般的なコンピューティング プラットフォームよりも計算負荷の電力効率を高く保つことができるのは重要なことです」と Towal 氏は述べています。

海洋測量とエッジ AI の出会い

Saildrone は NVIDIA JetPack SDK を活用し、Jetson プラットフォーム上のハードウェア アクセラレーションによるエッジ AI の完全な開発環境にアクセスしています。画像ベースの船舶検出のため、モジュール上で機械学習を実行し、ナビゲーションを支援します。

Saildrone の操縦士は、航行中の USV から送られてくる気象や海象情報を含む海洋気象データをもとに、航路を設定し、最適化します。すべての USV は 24 時間体制で監視されており、オペレーターはクラウド経由で遠隔操作によってコースを変更することができます。

機械学習は、衛星接続があればクラウド上でも実行できますが、高解像度の画像を生成する堅牢なセンサー群からデータを送るには帯域幅が制限されていることがあり、コストもかかることから、主に SUV の Jetson モジュール上で実行されます。

USV には、風、水温、塩分、溶存炭素を測定する海洋センサーが搭載されています。水深測定センサーを使用した海底や湖底の調査も可能で、より深く、または広く進むためのシングルビームやマルチビームを使用した深層ソナーによるマッピングも行っています。また、認識センサー群には、レーダーと視覚的な水中音響センサーが含まれています。

いざ深海へ

Saildrone は、ビジョン AI アプリケーションとサービスのために NVIDIA DeepStream SDK を利用しています。開発者は、このキットを使用して、AI ベースのビデオ、オーディオ、画像解析のためのシームレスなストリーミング パイプラインを構築することができます。

10 倍のスループット向上を提供する DeepStream は、エッジからクラウドまで適用することができ、複数のビデオ、画像、音声ストリームを扱う最適化されたインテリジェント ビデオ アプリケーションの開発を可能にします。

Saildrone は、画像の前処理とモデルの推論に DeepStream を利用し、太陽と風を動力源とする海上でも、エッジでの機械学習を可能にします。

NVIDIA Jetsonモジュールと DeepStream SDK の詳細については、こちらをご覧ください。