VRと自動車製造の融合:AIが生み出した世界初の自動車「Hack Rod」でGPUを利用

投稿者: Bob Pette

Hack Rodチームは、人工知能(AI)によって仮想環境で設計された世界初の自動車を開発することを目指しています。また、その過程で製造サプライチェーンを一変させる可能性も秘めています。

このロサンジェルスに拠点を置く新興企業は、膨大な計算能力が必要になるため、設計ソフトウェア・リーダのAutodeskとNVIDIAのGPUテクノロジに目を向けました。

AIを駆使して独自のデザインをクリエイティブに考案するコンピューターは、「ジェネレーティブ・デザイン」と呼ばれる分野の中核を成すものであり、現在のトレンドである「複雑な現象をすばやくシミュレートできるAIと強力なGPUの進歩」を促しています。また、これらにより、構造の発明においてソフトウェアが積極的な参加型の役割を果たすことが可能になりました。

Autodesk Dreamcatcherによるジェネレーティブ・デザイン

Autodeskは、「Dreamcatcher」にその概念を取り入れました。ユーザーはコンピューターと目標を共有し、達成したい内容と必要な制限事項をコンピューターに伝えることで、ソフトウェアがデザイナーのクリエイティブな可能性を高めるアイデアを生み出します。

Hack Rodチームが実証済みの形状を持つシャーシを製造したところ、取得されたデータから、車体と運転手に影響を及ぼす物理的な力が加わっていることがわかりました。そこで、複数回にわたる試運転では、車体と運転手に数百個のセンサーが取り付けられ、ストレスなどの数値が測定されました。そのデータは、Autodesk Dreamcatcherに送られ、新しいシャーシ・デザインが生み出されました。

その後、それらのデザインはDreamcatcherソフトウェアに送られました。このソフトウェアでは、すばやく分析を行い、最終的な推奨案を生成するうえで必要な優れた計算能力を確保するため、NVIDIA GPUが利用されています。

カリフォルニア州アナハイムで7月24~28日に開催されたSIGGRAPHのNVIDIAブース(#509)では、Silverdraft Demon VRによって提供されたVRコラボレーティブ・デザイン・レビューの一環として、Autodesk VREDの仮想プロトタイピング・ツールを使用してその最終的な推奨案が紹介しました。

製造の「民主化」

Hack Rodの創立者兼クリエイティブ・ディレクターであり、以前はプロのカー・レーサーでもあったモウセ・マッコイ(Mouse McCoy)氏は、次のように述べています。「写真のようにリアルなVRでの設計の観点から、ユーザーの世界が広がっていく様子はまさにマジックです。ユーザーが最終製品に関する判断を下すことのできるスピードは他に類を見ません。AIや機械学習を導入すれば、まるで1,000人のエンジニアが一斉に物事の解決にあたるようなもので、しかもかかる時間はこれまでの何分の1かです。これこそ製造の民主化といえるでしょう」

最終的なデザインを選択すると、そのデータが機械学習検索アプリケーションである「Autodesk Design Graph」に渡されます。このアプリケーションでは、基準に合った部品(実際のナットやボルトなど)に関する推奨案が生成されます。

ジェネレーティブ・デザインは、これまで製造できなかった複雑なエンジニアリング結果を生み出しています。先進製造分野の急速な進歩により、このような複雑な構造を製造できるようになりました。Hack Rod、Autodesk、およびNVIDIAは、11月にラスベガスで開催される「Autodesk University」で、金属3Dプリンターによって出力されたこの大型モデルのサンプルをいくつか紹介するほか、3月にテキサス州オースティンで開催されるSXSWでは、「Game to Garage」の完全な運転デモを提供する予定です。

マッコイ氏は、次のように続けます。「ものづくりの未来は非常に明るいといえます。コラボレーティブなフォトリアル3D VRデザインをAIに基づくジェネレーティブ・デザインや、機械学習、先進製造と組み合わせることで、未来型のサプライチェーンが生まれ、誰もが大規模組織の能力を手に入れられるようになるでしょう」