54 年以上のキャリアを積んできたコーネル大学の研究室から、SIGGRAPH 参加者に最新の研究について語る

ドナルド グリーンバーグ (Donald Greenberg) 博士は、デザインの未来について聞かれるとヒト大動脈のモデルを示します。

コンピューター グラフィックスのパイオニアであるグリーンバーグ博士は、コーネル大学の自身の研究室からのビデオ インタビューの中で、「私の息子は、クリーブランド クリニックの心臓血管外科医になった後、私の学生の 1 人を雇い、CAT スキャンを使用して大動脈瘤のデジタル 3D モデルを作成しました」と語りました。

そのモデルにより、患者に応じたステントのカスタマイズが可能になり、ステント挿入後すぐに退院できるようになりました。これは、コンピューター グラフィックスがあらゆる人間の活動の一部になりつつあることを示すものとして彼が紹介する例の 1 つです。

まったく新しい時代の幕開け

フロンティアの拡大を目指す彼は、今日のリアルな 3D 世界やデジタル ツインの構築能力に基づく、建築デザイン講座向けに新しいツールを開発しています。これは、エンジニアから都市計画担当者まで誰でもデザインに参加できる包括的なプロセスを定義するものになる見込みです。

このコースウェアはまだ概念段階にありますが、これにかける彼の情熱は容易に見てとれます。NVIDIA がスポンサーするその研究について、「これは私の次の大きなプロジェクトであり、とてもワクワクしています」と語ります。

「NVIDIA のハードウェアとソフトウェア アルゴリズムは卓越していますが、昔からそれらの組み合わせ方にこそ最大の優位性があります」

グリーンバーグ博士は、手頃な価格の住宅に関心のある都市計画担当者、持続可能な暮らしを意識する環境活動家、新しい建造物が各自の日照権に及ぼす影響について知りたい近隣住民までもが参加できるほどオープンなデザイン プロセスを思い描いています。

「異なる学問分野の人々を同じ場所に集め、同時に異なる視点から物事を見ることができるようにしたいのです」と語るグリーンバーグ博士の講座は、これまでもコーネル大学の建築学部、芸術学部、コンピューター サイエンス学部、工学部、経営学部にまたがっています。

Omniverse を活用した授業

グリーンバーグ博士の研究は、コーネル大学の工学部と建築学部で教鞭を執り始めた 1968 年以来、集学的アプローチに支えられており、常に最新テクノロジに根差してきました。

つまり、今やデザイナーや建設専門家は、NVIDIA Omniverse でフォトリアルなグラフィックス、シミュレーション、AI によって構築された仮想世界に入り込みたいという考えを抱くまでに至っています。

「Omniverse は、Pixar のような企業に勤める何人かの非常に優秀なグラフィックス技術者によって開発された Universal Scene Description (USD) を使用して作成されたものを、さまざまな領域に広げます。現代のコラボレーションに最適な環境です」と彼は言います。

それは、グリーンバーグ博士が 54 年のキャリアの中で目の当たりにしてきた何百万倍ものコンピューティングの進歩なくしてはあり得ない能力です。

彼は、1979 年に 1 MIPSの性能を備えた初めてのシステムである VAX-11/780 ミニコンピューターを購入した当時の興奮を振り返ります。彼は、SIGGRAPH で数多く行った講演の 1 つで、いつかデザイナーが 100 MIPS の性能を備えたパーソナル ワークステーションを使うようになるだろうと述べていました。

何倍もの進歩を目の当たりに

その予測は、目も当てられないほど控えめであったことがわかりました。

「現在使用しているマシンは、私が最初に使用したコンピューターの 1,012倍の性能を備えています。まるで高波を乗りこなすサーファーのような気分です。それがいまだに教鞭を執っている理由の 1 つです」と言います。

グリーンバーグ博士と最新のデザイン ツールを試す学生たち

ニューヨーク州シラキュースにあった General Electric の Visual Simulation Laboratory に置かれていたシステムは、現在のマシンとはかけ離れていました。1960 年代後半、彼はその研究所においてパンチ カードでプログラミングを行い、コンピューター グラフィックスのみで生成された世界初のビデオの 1 つの制作を支援しました。彼と建築学部の学生 14 人が 2 年をかけて制作したその 18 分のアニメーションは、観客の度肝を抜きました。

NASA は、宇宙飛行士に対するアポロ モジュールと月着陸船のドッキング訓練に同じ GE のシステムを使用していました。NASA はデジタル ツインをいち早く取り入れた組織の 1 つで、月に向かう途中に 2 日間のシステム異常に見舞われたアポロ 13 号の搭乗員の命がそのおかげで救われたという事実を指摘しました。

スケッチからデジタル ツインへ

グリーンバーグ博士にとっては、コンピューター グラフィックスの力ということに尽きます。

「指摘しておきたいのは、知的吸収の 99% は視覚によるものだということです。私の最近のプロジェクトは、スケッチまたはアイデアからデジタル ツインを構築する方法に関するものです」と彼は言います。

彼は、後悔することはほとんどないものの、今年の SIGGRAPH に参加できなかったことは残念だと語りました。

「SIGGRAPH は、ごく親しい友人や協力者にとって学問上の故郷であり、独立独行の研究者のコミュニティであり、豊かな創造力と優れた技術スキルを兼ね備えたクリエイティブな人々と会える唯一の場所です。とはいえ、私の歳では旅行はきついのも事実です」と、コンピューター画面の前に座って開拓を続ける 88 歳は言います。

「問題を探し求めて取り組んでいる技術と呼べることは山のようにあります。たとえば、網膜がどのように像を捉えているのかをモデル化する試みなどは、取り掛かったばかりです」

Omniverse の詳細は DLIとSIGGRAPH で

NVIDIA Deep Learning Institute で自分のペースで進められる無料のオンライン コースを受講すれば、誰でも USDとOmniverse によるデジタル ツイン開発の基礎を学ぶことができます。個人の方は無料で Omniverse をダウンロードできます。教育関係者は、「グラフィックスと Omniverse」教育キットへの早期アクセスに申し込むことができます。

NVIDIA の CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) やその他の講演者による SIGGRAPH での特別講演はオンデマンド配信でご覧いただけます。