NVIDIAが「AI向け半導体」をテーマに講演
日本女性技術者フォーラム(JWEF)は、様々な業種業界の女性技術者間で、情報交換などを行い、交流を深めることで広い視野を養い、より一層の活躍をの場を創成することを目的に1992年に創設されました。JWEFの主な活動として、分野を超えた女性技術者相互の交流、技術者を目指す女子学生との交流、国内外の組織との交流、定例会や部会、ネットでの会員間親睦会を実施しています。
この度、各分野で活躍中のJWEF会員を対象として、「JWEF 2021 産業技術勉強会」が7月2日(金)に開催されました。産業技術勉強会は2015年より開始し、勤務後の時間帯に、毎回、原則として、経済産業省をはじめとする国の機関、民間企業を中心とする先端技術の現場から各1名の講師を招き、勉強会を実施しています。過去には自動運転、医療機器産業、ポスト5G情報通信システム、宇宙産業などの幅広いテーマで勉強会が開催され、今回で21回目を迎えます。今回のテーマは 「AI向け半導体」で、様々な産業や日常生活において浸透し始めたAI技術について学ぶ機会となりました。
日本女性技術者フォーラムの産業技術勉強部会長の、金田千穂子氏(東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター教授)は開会あいさつを次のように述べました。「AIは、これまでにこの勉強会でも取り上げた、自動運転や、インダストリー4.0が目指す工場内外の大量のデータを活用したものづくりの変革などに始まり、身近な携帯端末にもその用途が広がることで、人々の生活様式を一変させています。この度は、AI向け半導体をテーマに、この分野における現状と課題、施策、技術のフロントとその可能性などについて概観するよい機会となるでしょう」
イベントの前半は、経済産業省 商務情報政策局情報産業課 課長補佐 齋藤尚史氏による「AI向け半導体の開発支援施策」というテーマでご講演が行われました。講演は6月4日に経済産業省で公開された「半導体・デジタル産業戦略」および「半導体戦略」の内容を引用しつつ、半導体の国内製造基盤強化の基本的方向性などについて説明が行われました。
そしてイベント後半には、NVIDIAのソリューションアーキテクチャ&エンジニアリング部 シニアソリューションアーキテクト 村上真奈が「近年の深層学習動向とAIの展望について」と題して講演を行いました。JWEFの会員は、IT分野以外からの女性技術者の参加もいるため、講演では、まずAIの歴史を振り返り、近年の深層学習の現状および動向を説明しました。そして、AIを活用した最新事例を映像を交えて紹介し、今後のAIへの期待について語り講演を終えました。
村上の講演後、質疑応答の時間が設けられました。参加者からは、「昨今のAIの進展が早く、適応する範囲も増え、計算量も増えるのでどのようにチューニングしているのでしょうか。半導体の開発がAIの要求に追いつかないので、どのように対応しているのでしょうか」との質問に、「NVIDIA GPUのハードウェア アーキテクチャは約2年に一度のペースで刷新されて、そのタイミングではGPUの計算性能が格段に向上します。ハードウェア アーキテクチャ刷新のペースに対して、確かに、ニューラルネットの進化はとても早いのですが、ソフトウェアによる最適化の余地は多分にあります。一般的な計算でも近似手法を用いて、一部の計算を高速化したり、計算の順番を少し入れ替え、並列化しやすくしたりすると思います。深層学習でも同様にソフトウェア最適化による高速化が可能となります。いかにソフトウェアで最適化するかも重要です。最新のソフトウェアはNGC catalogなどで積極的に公開しているため、開発者はいつでもそれらを活用いただけます」と村上はコメントしました。
また、他の参加者からは、「AIにおけるソフトウェアの開発環境がとても充実してきているようですが、これからAIを学ぶ学生にとってソフトウェアの勉強は重要になるのでしょうか。」 と質問があり、村上は以下のように回答しています。「現在は、ネット上に無料で公開されているオープンソースやJupyter Notebookを通じて、自分で一からコーディングしなくても、最先端の研究や技術に触れる事が出来ます。学ぶ意欲を持つためには、まずは興味を持つ事が重要だと思いますので、このような環境はとても大切だと思います。以前より裾野は広がっている一方で、敷居は下がってきていると思います。ただ、ソフトウェアについて学ぶことは技術への理解を深めるという意味でとても重要だと思います。」
産業技術勉強会を通して、国内外の産業の主な技術動向、今後の課題、施策などの知見を広げることで、産業技術における新たな機会を生み出すことが可能となります。JWEFでの様々な活動の学びは今後の国内における女性技術者の活躍の場を広げるとともに、社会への貢献が飛躍的に期待されることでしょう。
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