医療機器向けアルゴリズムの研究開発では、最先端のアルゴリズムを探求するために、常にハイエンドの演算能力を備えた専用の PC が必要とされてきました。

並列コンピューティング プラットフォームとプログラミング モデルの CUDA の発明により、多くの医療機器、医療器具ならびにモデルに NVIDIA GPU を組み込む動きが加速しました。これによって、高性能なアルゴリズムのワークロードのためのソフトウェア開発のサイクルが生まれるようになっています。現在では、医用画像のワークフローが採用されており、動画または画像のキャプチャ機能が付いた医療機器などの医用画像を必要とする他の分野にも自然に広がりつつあります。AI を医療機器に統合するのであれば、新機能の開発を加速させるコンピューティング リソースの必要性も高まります。

NVIDIA は、この要件に対処する NVIDIA Clara AGX 開発キットを導入し、これによって、医療器具のための先進のアルゴリズムと AI スキルの研究を促進します。Clara AGX 開発キットは、Jetson AGX Xavier、Mellanox Connect X-6 NIC、RTX 6000 GPU および HDMI 2.0 入力から構成されています。Clara AGX SDK は、コンテナ化されたランタイムとサンプルの AI スキルに加えて、必要な OS、ドライバーおよびライブラリが備わっています。ハードウェアとソフトウェアのこのような組み合わせによって類を見ないプラットフォームが生まれ、これを利用して、医療機器メーカーやソフトウェア開発者、医学研究のコミュニティでは、AI の最新の成果を医療器具により簡単に導入できるようになります。

AI スキル開発のためのスケーラブルなコンピューティング

Jetson AGX Xavier をベースとしたClara AGX 開発キットには、Jetson 製品ファミリーでサポートされている、豊富で多様なライブラリとツールのエコシステムが含まれています。Jetson AGX Xavier モジュールは、AI を活用した自律マシンを可能にし、わずか 10W の電力で最大 32 TOPS の演算性能を発揮することができます。世界の主要 AI コンピューティング プラットフォームとして、Jetson AGX Xavier では、NVIDIA の充実した AI ツールとワークフローを活用して、開発者はニューラル ネットワークのトレーニングと展開を短期間で行えるようになります。AI アプリケーション構築するための包括的なソリューションである Jetpack SDK は、標準的な Linux オペレーティング システム、ボードのコンポーネントに対応する BSP、および CUDA を Clara AGX 開発キットでサポートし、CUDA アクセラレーションに対応しているエコシステムの全体で Clara AGX 開発キットの利用が可能になります。また、Clara AGX SDK には、ストリーミング データの処理パイプラインを構築するための Rivermax と DeepStream、EGX を経由しての展開を可能にするコンテナ化したランタイム、および特定のユースケースのモデリングするリファレンス アプリケーションが含まれています。

Jetson プラットフォームは製品化に最適なテクノロジですが、次世代のアルゴリズムの開発には、NVIDIA の外付けGPU によってコンピューティング リソースを増大させる必要もあります。RTX GPU の高い性能により、コードの最適化に費やす時間を削減し、性能を犠牲にすることなくアルゴリズムの実験を行うことが可能になります。

Clara AGX 開発キットには、200 INT8 AI TOPS 以上のピーク パフォーマンスを実現する、NVIDIA RTX 6000 GPU が搭載されています。RTX 6000 は、きわめて複雑で要件の厳しい AI アプリケーションの複数の同期推論パイプラインを実行することができ、最新の AI モデルの研究開発がより円滑に進められます。

研究開発のフェーズが完了し、最終的な AI モデルの準備が整うと、開発者は完全にスケーラブルなアーキテクチャでそれらを最適化し、展開することができます。低消費電力のユースケースを求めている開発者であれば、より小さなフォームファクターの電力とサイズの要件を満たす Jetson 製品ファミリーを利用できます。高性能なユースケースであれば、Jetson 製品と RTX GPU を適切に組み合わせた、製品化されたシステムでの展開が可能となります。NVIDIA は、アプリケーション ソフトウェアの 1 つのセットから、真の意味で包括的かつスケーラブルな製品を提供しています。

高帯域幅センサーのためのスケーラブルな接続性

医療器具では、他の多くの組み込みシステムと同様に、GPU Direct または RDMA のストリーミングを介した、さまざまなアップストリーム センサーと GPU 間の高帯域接続が求められます。Clara AGX 開発キットでは、このような特殊な接続を 2 つの異なった手法を通じて行うことができます。

1 つめは、NVIDIA Mellanox ConnectX-6 ネットワーク インターフェース カード (NIC) を組み込んで、100G および 10G イーサネットの両方に対応する方法です。この先進のデバイスは、フルライン レートでRTX 6000 GDDR DRAM への GPU Direct に対応しています。Clara AGX 開発キットでは、ネットワーキング スタックをオフロードすることで、ストリーミング センサーのデータ パケットが CPU 使用率への影響を最小限に抑えながら、可能な限り最大のスループットと性能を実現します。

2 つめは、2 つの PCIe Gen4 x8 スロットを利用して、カスタムの PCIe カードや追加のネットワーク インターフェース カードに対応する方法です。1 つめの PCIe ポートは、NVIDIA Mellanox ConnectX-6 NIC の統合スイッチに接続されます。このポートにより、RTX 6000 GDDR DRAM に直接 RDMA データ転送が可能になります。このポートの使用例としては、複数の 4K60 12G SDI 入力を備えたカスタム ビデオ キャプチャがあります。2 つめの PCIe ポートは、Jetson AGX Xavier モジュールに直接接続されます。このポートは、外部ホストへの接続ができるほか、カスタムカードを介した特殊な出力にも利用できます。

パートナー向け開発者プログラム

NVIDIA は、Clara AGX 開発キットを対象とした、パートナー開発者プログラムも開始します。このパートナー開発者プログラムには、NVIDIA のハードウェアとコラボレーティブ ネットワーキングが含まれています。Clara AGX 開発キットについての詳しい情報は、上記のリンクをクリックするか、NVIDIA の代理店までお問い合わせください。

Clara AGX についてさらに詳しい情報が必要な場合は、秋の GTC のページで、マシアス ブレイク (Mathias Blake)、ジュハ タッキネン (Juha Tukkinen) およびブライアン フィーリー (Brian Feeley) 博士による、Architecting AI-Powered Medical Instruments (AI を活用した医療器具の構築) というタイトルのプレゼンテーションをご視聴ください。このプレゼンテーションでは、AI 革命がいかに医療機器に大きな価値をもたらすか、ならびに Clara AGX がその革命の中でどのような役割を果たすかについて議論がなされています。

詳細は、AGX DevKit ページ をご覧ください。