宇宙最古のもっとも遠い銀河に人類の未来を占うヒントが隠されているかもしれません。しかし、世界最大の望遠鏡をもってしても、NVIDIA の GPU なしに科学者がそれらの銀河を目にすることはできないでしょう。
欧州超大型望遠鏡 (E-ELT) によって、ハッブル宇宙望遠鏡が過去 30 年間地球に届けてきた美しい画像よりも、15 倍鮮明な画像が取り込めるようになります。チリの山頂で 2024 年から運用が開始され、ハッブルの 200 倍の集光力を持つとされる E-ELT は、科学者がはるかかなたの銀河をのぞき込み、かつてないほど詳細に宇宙を研究するための道を照らすことでしょう。
「E-ELT は私たちに宇宙の起源を示す可能性を秘めています。銀河の進化の過程を理解できるだけでなく、地球が属する銀河にこの先何が起こるかを予測することさえできるかもしれません」と、パリ ディドロ (パリ第 7) 大学の教授であり、パリ天文台 LESIA の科学研究員であるダミアン グラタドゥール (Damien Gratadour) 氏は、このたび開催された GPU テクノロジ カンファレンスの講演で述べています。
宇宙を見つめる
E-ELT は、補償光学と呼ばれる技術を取り入れた初の望遠鏡です。この技術は、光線への乱気流の影響を抑え、画像の質を向上させて、均一にするためのものです。暑い日に道路が揺らいで見えるのと同じように、乱気流は科学者が宇宙の鮮明な画像を取り込む際の妨げとなります。
キング アブドゥッラー科学技術大学の上級科学研究員であり、グラタドゥール氏と共同で E-ELT の研究を行っているアテム ルタイエフ (Hatem Ltaief) 氏は、次のように述べています。「補償光学を利用しない超巨大望遠鏡を設置することは、高速なスポーツ カーを手に入れ、もっとも低速なギアで運転するようなものです。」
だからこそ GPU が重要になる、とルタイエフ氏は言います。
数年前 GTC で出会った両氏は、GPU を利用したシミュレーションを走らせ、E-ELT の構成の変化がいかに画質に影響を及ぼすかを予測しようとしています。望遠鏡の反射鏡の角度やカメラの数のほか、さまざまな因子を変更することで、画質が向上する可能性があるためです。
グラタドゥール氏は、「科学的成果とコストとの間で、最善の妥協点を模索しています」と言います。
銀河の観測結果を数秒でシミュレーション
ルタイエフ氏とグラタドゥール氏は、NVIDIA の DGX-1 AI スーパーコンピューター 2 台 (1 台は Tesla P100 GPU 搭載、もう 1 台は Tesla V100 GPU 搭載) を使って、多数のシミュレーションを並行して走らせ、リアルタイムで変更を行っています。
「DGX-1 を使用すると、いくつかの銀河の観測結果をわずか数秒でシミュレートできます。数年前なら何日もかかっていた作業です」と、ルタイエフ氏。
両氏の次の計画は、ディープラーニングを取り入れて、いかに構成を変えればもっとも効果的に画像が向上するかを、より高い精度で予測することです。とはいえ、両氏はその計画についてそれ以上の言及は控えました。ルタイエフ氏は、「ぜひとも来年 GTC に戻ってきて、そのときにお話ししたい」と述べています。
※この記事のメイン画像は E-ELT のイラストレーションであり、ヨーロッパ南天天文台、キング アブドゥッラー科学技術大学 (KAUST)、およびパリ ディドロ (パリ第 7) 大学から提供されたものです。