編集者注: 本記事は、最新のオープン モデル、データセット、トレーニング手法が、企業による NVIDIA プラットフォーム上での特化型 AI システムやアプリケーションの構築にどう役立つかを探る「Nemotron Labs」ブログ シリーズの一編です。各記事では、透明性の高いリサーチ コパイロットからスケーラブルな AI エージェントに至るまで、オープン スタックを活用して本番環境で真の価値を生み出すための実践的な手法を紹介します。
企業には、強力なモデルの選択肢が豊富にあります。真に問われるのは、企業が構築する AI が、ワークフローを改善する、専門知識を活用する、精度や信頼性に関する基準を上回るといった自社固有のビジネス ニーズに応えられるかどうかです。
AI 分野における競争上の優位性は、どのモデルを選ぶかよりも、利用可能なモデルを組織がどのように活用して AI を構築するかによって決まる傾向が強まっています。
NVIDIA Nemotron などのオープン モデルは、カスタマイズを前提に構築されており、企業や国家が、制御可能で信頼性が高く、それぞれのニーズに合わせた AI を構築できるよう支援します。
AI の活用からインテリジェンスの所有へ
自律型のエージェントやアプリケーションといった特化型 AI は、カスタマイズされたオープン モデルを用いて構築されています。これらのエージェントは、独自の知識で最適化され、実際のビジネス成果に照らして評価されたモデルを用いることで、明確に定められたタスクを適切に遂行できるよう構築されています。
そのためには、モデルそのものにアクセスする必要があります。クローズド モデルは実現可能な範囲を広げ、汎用知能の最前線を押し広げ続けていますが、その一方で、企業がモデルを検証、最適化、改善できる範囲に上限を設けます。オープン モデルはその障壁を取り払い、企業に完全な所有権と制御権をもたらします。
最も効果的なエージェント型 AI アプリケーションは、複数のモデルで構成されるシステムです。そこでは、オープン モデルと最先端のフロンティア モデルが連携し、それぞれが最も得意とする役割を担います。高性能なリーズニング モデルは複雑な計画立案に対応できる一方で、小規模なモデルは専門的なタスクを実行できます。これにより、企業は推論コストを適正化し、特定のタスクにおける精度を向上させ、ワークフローの変化に対応できる柔軟性を維持できます。
企業が信頼できるカスタマイズ
オープン モデルは、クローズド モデルには提供できないものを企業にもたらします。それは、ビジネス ニーズに合わせて AI をカスタマイズ、検証、改善するための完全な制御です。公開ベンチマークは汎用的な能力を測定するものですが、ビジネスに特化した評価を行えば、自社のデータ、ワークフロー、精度の定義を基準にテストし、その結果をもとに改善を進めることができます。
例えば、ヘルスケアや法務などの業界では、機密データを扱い、厳格な精度基準への対応が求められるため、誤答がもたらす代償は非常に大きくなります。これらの分野の組織には、モデルがどのようにトレーニングされ、どのような性能を示しているのかを把握し、必要に応じて改善できることが不可欠です。
オープン モデルを利用すれば、チームは自社のアプリケーションを検証し、独自の基準に基づいて自社内で評価を実施し、自社のワークフローに合わせた強化学習環境を構築できます。その際、自社の機密データを第三者経由で送信する必要はありません。
すでに、さまざまな業界の企業が Nemotron を自社の分野に合わせて特化させています。
- Abridge は Nemotron をカスタマイズし、臨床現場での対話に特化して設計された初の基盤モデルを構築しています。
- Glean が開発した Waldo は、Nemotron をさらに大規模なクローズド モデルと組み合わせたエージェント型検索モデルであり、レイテンシを大幅に抑え、より少ないトークンでエンタープライズ検索を実現します。
- H Company は、独自のコンピューター操作データを用いて Nemotron 3 Nano Omni のポストトレーニングを行い、Holotron 3 Nano を開発しました。これにより、コンピューター タスクのベンチマークである OSWorld-Verified で 76% を超える精度を達成し、他の主要なフロンティア モデルに匹敵する性能を数分の 1 のコストで実現しています。
- Harvey は、自社の法務ベンチマークを用いて Nemotron 3 Ultra の事後トレーニングを行い、最先端クラスの精度を達成しました。複雑な法務タスクにおいて、主要なクローズド モデルに匹敵する性能を、1 回あたり 10 分の 1 以下のコストで実現しています。
- Heidi Health は、フロンティア モデル級の大規模な計算リソースを必要とせずに、臨床文書作成においてフロンティア モデルに匹敵する成果を実現しています。
- YTL AI Labs は、マレー語向けに Nemotron モデルを事後トレーニングし、現地向けにカスタマイズされた AI をマレーシアの開発者コミュニティに提供することで、同国の AI 能力のさらなる向上に貢献しています。
ファインチューニング環境と最適な実行コスト
カスタマイズによって精度は向上します。モデルを特定のハーネスやドメインに合わせて最適化することで、実行効率も向上します。
オープンなライブラリ群である NVIDIA NeMo は、エージェントの最適化とガバナンスに加え、モデルのカスタマイズと評価も加速させます。
Prime Intellect や Unsloth といったパートナー企業は、Nemotron 上で事後トレーニングのパイプラインを構築する企業向けにAI のカスタマイズをすでに支援しており、特化型 AI の大規模運用を実用的なものにしています。
LangChain は、モデルを再トレーニングすることなく、プロンプト、ツール、ミドルウェアを調整することで、Nemotron 3 Ultra 向けに Deep Agents ハーネスを最適化しました。その結果、主要なクローズド モデルと比較して 1 回あたりの実行コストを約 10 分の 1 に抑えつつ、オープン モデルの中で最高のエージェント精度を達成しました。
こうしたコスト面での優位性は、最適な拡張性を支えるインフラにも及んでいます。Arcee AI は、NVIDIA Blackwell プラットフォーム上で Nemotron の事後ストトレーニングを行い、出力トークン 100 万個あたり約 90 セントという推論コストを実現しました。これは同等のクローズドなフロンティア モデルの約 20 分の 1 のコストです。さらに、PinchBench で 2 位にランクインしながら、完全なオープン ウェイトを維持しています。
コスト削減により、さらに幅広い実験、より多くの導入、より迅速な反復が可能になります。
オープンな基盤上でのエコシステム構築
AI を導入する段階から、AI を所有する段階への移行が進んでいます。NVIDIA Nemotron Coalition は、オープン モデルの開発をエコシステム全体の取り組みへと発展させるのを支援し、モデル構築者と開発者を結び付けて、データ、評価、ドメイン専門知識の共有を通じた Nemotron の改善を進めています。さらに、ハッカソンへの応募やコミュニティからの貢献を通じて、業界を横断して再利用可能な実証用アセットが生み出されています。
モデル開発者は、自らの AI システムに Nemotron を組み込み、その価値を実証し、効果的な手法を共有しています。その基盤は完全にオープンです。
NVIDIA Nemotron オープン モデルの詳細についてはこちらをご覧ください。また、build.nvidia.com で実際にお試しいただけます。
