技術デモの多くは涙と共に終わります。マイクロソフトが今週開催したBUILD 2015デベロッパー カンファレンスの基調講演として、スクウェア・エニックスが行った感動的なデモは、まさにこのことに焦点を当てた最初のものかもしれません。
ファイナルファンタジー シリーズのビデオゲーム開発元であるスクウェア・エニックスは、NVIDIAとマイクロソフトとの協力の下に、WITCH CHAPTER 0 [cry]と呼ばれる研究プロジェクトによりBUILDに集まった聴衆に衝撃を与えました。
人が泣くところはデジタルによって作り出すことが最も難しいもののひとつと考えられていますが、このプロジェクトでは、それをリアルタイムのコンピュータ生成キャラクターでは従来になかったレベルで再現しています。
これは長年にわたって「不気味の谷」を超えることに苦労してきたこの業界にとって、マイルストーンとなる可能性を秘めたデモでした。
ロボット工学のパイオニアである森政弘氏によって50年近く前に名付けられたこの用語は、デジタルの世界の情緒的な現実感と実際の現実との間の境界が曖昧になり、観察する側の人間に奇妙な、場合によっては嫌悪感ともなる感覚を生み出す現象を意味しています。
この感覚を克服することは、コンピュータで生成するグラフィックスにおいて、数十年にわたり手の届かないゴールであり続けてきました。
WITCH CHAPTER 0 [cry]プロジェクトはマイクロソフトの新しいDirectX 12アプリケーション プログラミング インターフェイス(API)とNVIDIA GeForceグラフィックスをエンジンとし、この不気味の谷を越えるための道筋を示しています。
キャラクターの感情表現にさらに現実感と深みを与えることができれば、プレイヤーのストーリーへの没入感が高まり、またキャラクターへの感情移入もさらに大きくなります。
NVIDIA GameWorks Effects StudioとGeForce GTXグラフィックスは、スクウェア・エニックスが採用した次世代技術に加わりました。スクウェア・エニックスはまたDirectX 12を使ったリアルタイムのCG技術についても徹底した研究を行いました。これからの結果はスクウェア・エニックスのLuminous Studioに組み込まれる予定です。
BUILDにてマイクロソフトは、NVIDIAのフラッグシップ製品であるGeForce TITAN X GPUを4枚使って実行される研究プロジェクトも明らかにしました。これはマイクロソフトの次世代オペレーティングシステムである、Windows 10に搭載される予定のDirectX 12 APIによって何が可能となるかの息を吞むような事例を示しています。
このプロジェクトを通じて得られたノウハウの多くが、明日のゲームに反映されることは間違いありません。これだけでもうれしさの涙を流すだけの十分な理由となります。