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Qure.ai、COVID-19 患者の肺のスキャンをめぐるさまざまな判断で臨床医を支援

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インドのムンバイに拠点を置くスタートアップの Qure.ai は、2016 年から肺のスキャンから疾患の兆候を検知する AI ツールの開発を続けてきました。そのため、新型コロナウイルス (以下、COVID-19) の世界的流行が始まるとすぐ、臨床医の緊急のニーズに応じて自社ソリューションの改造に乗り出しました。

現在 24 を超える国々で利用されている Qure.ai の胸部 X 線ツール「qXR」には、肺の異常、つまり腫瘍や結核をはじめさまざまな症状の兆候を検知するために、すでに 250 万枚のスキャン画像を使った学習が行われています。

COVID に特化した最初のデータセットが中国や韓国、イランといった早期に大流行が発生した国々から公開されると、同社はいち早くそれらのスキャン画像を取り込み、qXR で胸部 X 線画像の該当箇所にマークを付け、COVID-19 のリスク スコアがわかるようにしました。

「世界中の臨床医が、COVID-19 の症状に対する極めて重要な判断に役立つツールを探しています。たとえば、患者を病院で受け入れるかどうか、ICU に移すかどうか、あるいは人工呼吸器の挿管を行うかどうかといった判断です。そうした臨床的判断は、客観的データがあればより的確に下せます。そして、それこそが当社の AI ツールが提供するものです」と、Qure.ai の最高商務責任者であるチランジブ シン (Chiranjiv Singh) 氏は説明します。

医師は体温の計測結果や酸素濃度のデータを持っていますが、AI は患者の肺に対する影響を定量化するのに役立ちます。これにより、検査キットが足りない場合に COVID-19 と思われる症状をトリアージしたり、複数の胸部 X 線を比較して病状の経過観察を行うといった臨床医の作業が楽になります。

ここ数週間で同社が COVID-19 版 qXR を展開した先は、英国、インド、イタリア、メキシコをはじめ世界およそ 50 拠点に上ります。たとえばパキスタンでは、地域社会で積極的に症例を追跡する医療用バンでqXRが利用されています。

スタートアップの速やかな成長を助けるリソースの提供を目的とした NVIDIA Inception プログラムのメンバーである Qure.ai は、NVIDIA TITAN GPU をオンプレミスで、V100 Tensor コア GPU を Amazon Web Services を通じて利用し、AI モデルの学習と推論を行っています。欧州ですでに CE マークの認定を受けた qXR は、現在 FDA 認証の取得に向け手続きを進めています。

COVID-19 の画像の取得

コロナウイルスの症例では、すべてのケースで肺への影響が見られるわけではないため、胸部 X 線が担う役割は全体の一部にすぎません。しかし、ベッドサイドに持ち運べるものを含め多様な X 線装置が普及していることから、COVID-19 患者を受け入れている病院では、X 線装置がすぐに使われるようになりました。

「これまでの文献から、COVID-19 であることを示す特定の兆候が胸部 X 線画像に現れることがわかっています。我々はすりガラス陰影や浸潤影と呼ばれる陰影を確認し、このウイルスが両肺におよぶことに気づきました。当社の AI モデルは、これらの因子や関連所見に対し陽性スコアを、COVID でないことを示す石灰化や胸水といった所見には陰性スコアを付けています」と、シン氏は述べています。

qXR ツールが臨床医に示すのは、COVID-19 の 4 つのリスク スコア (高、中、低、なし) のいずれかです。また、1 分以内に病変にラベルを付け、定量化することで、肺への影響を客観的に測定できます。

qXR は胸部 X 線画像を素早く処理することで、COVID-19 の症状がある患者の検査結果を待つ間のトリアージに利用している医師もいれば、特定の患者の経時的なスキャン画像を比較することで病状の経過観察を行うツールとして利用している医師もいます。使いやすさを考えて設計された qXR は、PACS 画像管理システムなど放射線科医の既存のワークフローに統合できます。

「ワークフローの統合が鍵となります。なぜなら、AI ソリューションを意識せず、医療ワークフローにスムーズに組み込むことができるようになるほど、採用が進み、利用が広がることが期待されるためです」と、シン氏は言います。

COVID-19 版 qXR の最初のバージョンでは、このウイルスに特化した 1万1,500 枚のスキャン画像を使った学習と検証が行われましたが、チームは毎週 2,000 枚ずつ新たなスキャン画像をデータセットに加え、データが増えるにつれて精度が向上しています。

シン氏は、会社が素早く方向転換できたのは、長年にわたって収集してきた胸部 X 線の多様なデータセットのおかげだと評価しています。Qure.ai は約 800 万のデータがあり、北米、欧州、中東、アジアに均等に分布しており、さまざまな機器メーカーやさまざまな医療機関で取得されたデータが混在しています。

「これだけのデータの量と多様性が当社の AI モデルの精度を支えています。特定の場所や国からの完璧でクリーンなデータに基づいて構築されたものは、新たな環境に移行した瞬間、意味をなさなくなってしまいます」と、シン氏は話します。

クラウドから臨床医の手元へ

COVID-19 患者の病状の経過観察で放射線科医を支援するために qXR を導入した何十もの拠点には、英国のボルトン NHS ファウンデーション トラストやイタリアのミラノのサン ラファエル大学病院が含まれています。

顧客は qXR をクラウドから展開することで、大抵 1 時間以内には稼働させることができます。病院は現在のパンデミックのような緊急性の高い状況で迅速に行動できるだけでなく、移動制限により現場でのインストールが不可能な状況にも対応できます。オンプレミスでデータ センターを運用する病院が顧客の場合は、オンサイトの計算リソースを推論に利用することも可能です。

Qure.ai の次のステップは、「このツールを世界中の放射線科医や、患者と直接やりとりする他の臨床医の手元にできるだけ多く届けることです」と、シン氏は言います。

他にも同社は、自然言語処理ツール「qScout」を開発しています。これは、ウイルスに感染したように感じる、あるいは自宅で療養している患者との定期連絡をチャットボットを使って行えるようにするツールです。外来患者の立場に置かれた人々との連絡を絶やさないことが、症状を観察し、患者が入院を必要とする場合に医療従事者に警告したり、病院インフラの過負荷を回避しながら患者の回復状況を把握する上で重要な手立てとなります。

チームが qScout を構想から最初の顧客であるオマーンの保健省に導入するまでにかかった期間は、わずか 6 週間でした。

Qure.ai の詳細については、先日行われた COMPUTE4COVID ウェビナー セッション「Healthcare AI Startups Against COVID-19」 (COVID-19 と戦うヘルスケア AI スタートアップ) をご覧ください。また、NVIDIA の COVID 関連ページにアクセスして、他のスタートアップが AI やアクセラレーテッド コンピューティングを駆使していかにこのウイルスと戦っているかをぜひご確認ください。


Isha Salian

Isha Salian is a part-time writer on NVIDIA's corporate communications team, having first joined the company as an intern in summer 2015. When not hunting down visual computing stories, she's a Stanford undergraduate majoring in communications and English. An aspiring writer, Isha’s many obsessions include books, dance (of the Indian classical variety), Netflix and Chipotle.

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