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次世代の製造現場にAIがもたらすもの NVIDIAディープラーニングセミナーを開催

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先月、「次世代の製造現場へ提案 NVIDIAディープラーニングセミナー」が開催されました。このセミナーでは製造業が直面する現場での人手不足問題やそれに伴う技術の伝承問題を解決するために、次世代の製造現場へ進化するための提案や事例をご紹介しました。NVIDIAとパートナーが提供する製造業向けのディープラーニング ソリューションを紹介し、日本を代表する製造業企業の導入事例が発表されました。

ABEJA 岡田陽介氏による基調講演を開催

セミナーの冒頭では、ABEJAの代表取締役CEOをつとめる岡田陽介氏による、「ABEJA Platformが提供するビジネスモデル変革とオペレーション変革」と題する基調講演も行われました。

製造業はAIを使って何を目指すべきなのでしょうか。そのキーワードとしてあるのが「デジタルトランスフォーメーション」です。具体的には「『オペレーション変革』と『ビジネスモデル変革』をもたらすべきだ」と岡田氏。「中でもAI導入に伴う削減化のコストは、AI導入コストより下回らなければならない。ここさえ間違えなければ利益は出てくる。最初から100%の効果を望むのではなく、まずは60~70%の精度を目指し、AIを育成させたのちに精度97%に持っていく」(岡田氏)。

AIによるビジネスモデルの変革について岡田氏は「人が体重計を買うのは、健康になりたいから。モノを売るのではなく、健康を知るというサービスに昇華できるかが重要だ。そこでのキーワードはサブスクリプション。月額課金でお金を得ていくことが大事だ。そこがわかっている企業はAI人材にお金を投資し、業績を上げている」と語りました。

「しかし製造業でこれを進めていくと、一番困るのが顧客満足度を計ること」だと岡田氏。通常は購入した瞬間から顧客満足度は下がっていきますが、サブスクリプションモデルでは、時間が経過するごとに満足度が向上しなければいけません。ハードウェアの性能が顧客側で自動的に上昇することはあり得ない。重要なのはソフトウェア」(岡田氏)なのです。

そして今では、自社でAI技術をまかなわなくても、外部に委託することで有効的なAI活用ができるようになっています。「これまでは学術分野で発展していったAIだが、これからは社会実装するのが重要。今はその絶好機だと思っている。AIを導入することでオペレーション変革、ビジネスモデル変革をしていってほしい」と岡田氏は述べました。

AIの現場実装にNVIDIA Jetsonを活用

武蔵精密工業からは「Jetsonを利用した現場実装事業展開モデル」というタイトルでの講演がありました。創業81年となる武蔵精密工業は、世界34拠点を持つグローバル企業。自動車のトランスミッションやエンジン関係の部品を製造している企業です。

同社は、既存事業を強化するとともに、イノベーションを起こし、新規事業によるさらなる事業展開するために重要になってくるのがAIであると語ります。同社はまた、少子高齢化による労働力不足の解消や人依存からの脱却、モノ作りの最適化による働き方か改革など、テクノロジの力を生かしたイノベーションで、社会課題の解決に貢献すること目標としています。

具体的には、デジタルで解決できない目視検査や、ラインから工場の出荷口に至る搬送工程などの自動化を行うことです。これによって同社は単純作業から人を解放し、新たな価値創造に振り分けることができると考えています。その単純労働の工程をになっているのは同社で約40%程度の人数なので、多少乱暴な計算としながらも、仮に全国の工場就業人数約800万人が同じ状況と仮定すると、320万人の人件費、15兆円くらいのマーケットになると同社は予想しています。

目視検査については不良発生率0.002%の製品を検査しているのが現状で、1日見ていても不良品が出るかでないかという状態。しかし不良品を出してしまえば、製品として成り立ちません。また単純作業のため付加価値を生みにくく、習熟度によるばらつきがあります。そのためこの工程を自動化すべく、AIによる自動検査機の開発をABEJAと協業して2017年に開始。その後自社エンジニアが開発を進め、2019年には生産現場に実装し、NG検出率100%、過検出5%という数値を達成しました。

また同社はAI自動検査機の自社開発を2018年に開始。クルマの「溶接ギア」における検出用に2019年には生産現場に実装し、NG検出率100%、過検出7%という成果を出しました。これまで100%人が見ていたものを、はじき出された7%のものを検査すればよいので、大幅な効率化を実現しました。

こうした取り組みの結果、同社のAI実装ノウハウを詰め込み、NVIDIAのJetson TX2を使った新しいAIコンピューターボックス「Neural Cube」を開発。将来的にはAIのアルゴリズムを汎用化し、検査物の大きさによって使い分けてキズ検知ができるような商品を検討しています。

搬送側についてはJetson TX2を搭載した自動搬送(SDV)の製品を開発。多品種少量生産を目指し、レイアウト変更に柔軟に対応できるシステムとなっています。
同社では、イスラエルのイノベーションセンターとジョイントベンチャーMusashiAI社を立ち上げ、Industry 4.0の実現を目指して、AI検査機、自動搬送機をを事業として展開中です。

AIは工場現場に限らず、物流倉庫の構内物流や農業の自動収穫、産業廃棄物の自動判別など、まだまだ広がる余地があります。人間はもっと人間らしい仕事をするべき。AIによって地球社会の発展に貢献するのが同社の姿勢です。

「HALCON」を使った画像処理におけるディープラーニングとは

リンクスは「世界最先端画像処理ライブラリHALCONが提供するディープラーニング機能のご紹介」として、同社が展開する、MVTec Softwareの「HALCON」についてのセッションを行いました。

HALCONはマッチングやディープラーニング、外観検査、高精度計測など、産業用画像処理に求められる機能を網羅しているのが特徴ですが、一番の強みはマッチング機能です。袋に書かれている文字など、形状が一定でないものについても登録した周辺に感度を持たせることが可能なので、高速度での検出が可能です。

また「HDevelop」という開発環境があり、画像処理の中間結果を表示したり、マウスベースで利用できる多彩なツールがあるので、効率的な開発が可能。ユーザーから開発効率が10倍上がったという報告もあるそうです。

HALCONには画像分析とオブジェクト検出、セグメンテーションという3つの機能がありますが、それぞれの機能にディープラーニングを組み合わせて活用できます。画像処理分野ではディープラーニングネットワークの学習と分類処理を、画像処理機能の一部として簡単に実装が可能です。データを用意し、良品、不良品など、クラス名を持つフォルダに格納したあと学習させ、パラメーターを調整するだけで分類が可能です。

HALCONのディープラーニング学習機能はNVIDIAのCUDAが搭載されているGPUであれば使用可能です。推論処理で巨大画像を使用する場合や、より高速化を目指す場合にGPUが必須です。

オブジェクト検出については、トレーニング画像とバウンティングボックスを読み込ませることで欠陥領域を検出が可能です。コンデンサとトランジスタ、ICを識別させると26.43msec程度の時間で検出できました。こうした作業には、形状ベースマッチングなどで処理を行っていましたが、テクスチャの位置により見え方が違い、マッチングのアルゴリズムが適用しにくいという状況でした。しかしディープラーニングを導入することで、画像を40枚程度読み込ませ、30分ほど学習させるだけで矩形一致率100%、処理時間25msecという高速な処理が可能となります。

なお、同社はHALCONとJetsonを組み合わせた「HALCON×Jetsonディープラーニングスターターキット」を展開中。これには同社が用意したサンプルプログラムも同梱されます。これにより組み込み環境でのディープラーニングが素早く導入できるとのことです。

ロボットアームや建機はディープラーニングで深化する

DeepXによるセッションは「ディープラーニングでロボットアームや建機を自動化」をテーマとしたものでした。

同社のミッションは、人工知能であらゆる機械を自動化すること。ショベルカーのような建設機械を自動化するといった大きなプロジェクトに取り組んでいます。

機械化や自動化のキーとなるのがディープラーニング。ディープラーニングを活用するためには、技術開発だけでなく、現場オペレーションを再設計して効率化を模索することも重要です。ただし人間の作業者は非常に優秀で、同等する能力を持つ技術の開発には、多くの年月がかかる可能性があります。そこで人が行っている作業を分別して、単純な作業をまず自動化し、そのあと複雑な作業について自動化するといったステップを採用すれば、現場に貢献できると同社は考えています。

ではものづくり産業は、ディープラーニングを導入することで何が変わるのでしょうか。これまではベルトコンベヤを駆使し、同じ動きを繰り返すことで自動化を図ってきました。しかしディープラーニングでは“教師データ”があれば、画像から任意の情報を
抽出したり柔軟に制御したりすることが可能です。これにより人が行うような臨機応変な対応が可能となります。そのため、開発の実現性を考慮した課題設計や、実現手法を設計することが大事になります。

AI開発についてはまだ不確実性があるため、開発の実現性と効用を踏まえて全体の戦略を設計することが重要です。そこで同社は現場の解決のためエンド・トゥ・エンドのソリューションを提供。現場視察を踏まえて、具体的な開発をしているとのことです。

上記のパートナー以外にも日本マイクロソフトによるAzure IoTとDeepStreamの連携がもたらすアドバンテージや、フジクラによるDGXを活用したディープラーニング導入事例など、製造分野に携わる多くの方々に参考にしてもらえる講演がありました。

製造業現場ではこれまで各社独自の手法により様々な問題解決に取り組んできました。今AIによる新たな時代を迎え次世代の製造業現場に飛躍的な変化をもたらしはじめています。世界中の研究者が生み出すディープラーニングの様々な汎用フレームワーク、NVIDIAが提供するAIコンピューティングプラットフォーム、NVIDIAのエコシステムパートナーが提供する様々なソリューションを活用することで、AI実装をスムーズに行うことができます。結果として製造現場に携わる方々は、その現場を知る人しか取り組むことができない各現場特有のデーター収集、現場に特化したモデルの生成、そのモデルによる推論結果の適切な分析といったところへ注力することができ、製造現場の効率化また生産性の向上をすばやく実現することができます。


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