第二次世界大戦の終戦から70年以上が過ぎた今、マンハッタン計画の放射性廃棄物は依然として処理を待っています。
全米各地のサイト(ワシントン州南東部のハンフォードが最大)での進展は遅く、コストがかかり、問題を抱えてきました。
放射性廃棄物の処理は、きわめて複雑です。砂浜で、特定の粒だけを取り分けるような作業になります。また、放射性元素を他の廃棄物から分離すればいいというものでもありません。元素によっては、何千年、または何百年も放射能が残留します。科学者は、これらを分類し、安全に保管する必要があります。
この作業はあまりにも複雑なため、処理方法が構築されていないものもあります。
そんな中、ある科学者の集まりが、GPUアクセラレーテッド・スーパーコンピューティングを使用し、貯蔵タンク内の放射性物質をよりよく理解し、安全かつ低コストでそれらを除去し、保管する方法を探っています。
「核兵器が作られた当時、それがどれほど危険なものか誰も理解していませんでした」と、当プロジェクトの主任研究員でありアラバマ大学の化学教授のデイビッド・ディクソン(David Dixon)氏は言います。
スーパーコンピューティングにより実験を加速
科学者たちは、世界でも最も強力なスーパーコンピュータであるオークリッジ国立研究所のTitanを使用し、原子が分裂する際に膨大なエネルギーを放出するウラン、プルトニウムなどの金属であるアクチニドという放射性元素の化学を研究しています。TitanはNVIDIA Tesla GPUを搭載し、短時間で多数の実験を行うためのスピードを科学者に提供します。
アクチニドは、放射能が高く、研究室で扱うのは困難です。しかし、汚染の除去の前に他の廃棄物から分離する必要があります。
Titanでは、科学者は、他の廃棄物からアクチニドを除去するさまざまな方法におけるアクチニドの化学反応をシミュレーションできます。これは、廃棄物の汚染を除去する新たな方法を科学者が開発できるようにするためのものです。
廃棄物処理が困難な理由
ハンフォード・サイトでは、1945年に長崎に落とされた爆弾のためのプルトニウムを製造していました。今日では、5,600万ガロンの高放射能の、化学的に有害な廃棄物が、老朽化した貯蔵タンクに保管されており、その3分の1ほどで漏れが生じています。また、地面にも、投棄されたり漏れ出したりした廃棄物が存在します。原子力時代の幕開けから廃棄物が保管されてきたサイトには、他にもロスアラモス、ニューメキシコ、セントルイスなどがあります。
問題は、科学者が貯蔵タンク内や地面に何があるかを正確に理解できていないことにあるとディクソン氏は言います。アクチニドの化学に関する知識が不足しているのです。ハンフォードの廃棄物の一部はこのサイト固有のものであるため、科学者は作業を行う前に処理方法を構築する必要があります。
オークリッジ国立研究所が次世代コンピュータに移行するにつれ、チームでは、GPUを最大限活用できるようソフトウェアもそれに合ったものにする予定だとディクソン氏は言います。
「複雑な現象について、信頼できる予測を可能にしたいのですが、そのためにはたくさんの計算が必要です」とディクソン氏は語ります。より多くのコードをGPUに担当させることで、科学者はより大きく、複雑なシステムのシミュレーションが可能になります。
この科学者の集まりは、アラバマ大学に加え、ローレンス・バークレー国立研究所、その他5つの大学(ワシントン州立大学、ニューヨーク州立大学バッファロー校、ミネソタ大学、ライス大学)の研究員で構成されました。